121008 初版

MathJaxがあまりにいいので, 調子に乗って書いてみる
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2次式の平方完成の技法

2次式の平方完成はよく使うので, 必ずマスターしたい。

だが,一手一手手順を踏む方法は,
理解はしやすいが,覚えるのも結構手間で,ミスは多い。
手順をみながら,ゆっくりするとできるが, テストになるとできない人もいる。
数学の問題を解くために,ほとんど記憶はいらない。
はやぶさの話題があったが, 宇宙空間にものを放り投げたら,物理法則に従い, ほぼ人手を離れる。
だが,軌道を修正する場合は,人間が考え,指示をだす。
数学の問題を解くことと似ていて, ステップを考えることと,放たれたボールのように計算が進む場面とにわかれる。

そして,平方完成は,
増減相反する2項を纏めようというのが思想の根にある。

いきなり一般形だが,

\(a\left(x+\dfrac{b}{2a}\right)^2=ax^2+bx+\dfrac{b^2}{4a}\)
実は右辺の第3項は無視してもよい。

具体例をいくつか挙げる。

\(x^2+2x\)の平方完成なら\((x+1)^2\)を連想する。
\(x^2+4x\)の平方完成なら\(\left(x+2\right)^2\)を連想する。
\(x^2-4x\)の平方完成なら\(\left(x-2\right)^2\)を連想する。
\(x^2+x\)の平方完成なら\(\left(x+\dfrac{1}{2}\right)^2\)を連想する。
\(x^2-3x\)の平方完成なら\(\left(x-\dfrac{3}{2}\right)^2\)を連想する。
\(-x^2+4x\)の平方完成なら\(-\left(x-2\right)^2\)を連想する。
\(2x^2-4x\)の平方完成なら\(2\left(x-1\right)^2\)を連想する。
\(2x^2+x\)の平方完成なら\(2\left(x+\dfrac{1}{4}\right)^2\)を連想する。
覚えることは少なく,計算は覚えることではないので,
正確さに心がければこれが楽である。

一般的には

\(ax^2+bx\)の平方完成なら\(a\left(x+\dfrac{b}{2a}\right)^2\)を連想する。

例として,4つほど挙げる。

\(x^2-6x+1\)の平方完成なら\((x-3)^2\)を連想して,
\((x-3)^2=x^2-6x+9\)だから,
\(x^2-6x+1=(x-3)^2-8\)
\(x^2+3x+2\)の平方完成なら\(\left(x+\dfrac{3}{2}\right)^2\)を連想して,
\(\left(x+\dfrac{3}{2}\right)^2=x^2+3x+\dfrac{9}{4}\)だから,
\(x^2+3x+2=\left(x+\dfrac{3}{2}\right)^2-\dfrac{1}{4}\)
\(-x^2+4x+5\)の平方完成なら\(-\left(x-2\right)^2\)を連想して,
\(-\left(x-2\right)^2=-x^2+4x-4\)だから,
\(-x^2+4x+5=-\left(x-2\right)^2+9\)
\(-2x^2+x-1\)の平方完成なら\(-2\left(x-\dfrac{1}{4}\right)^2\)を連想して,
\(-2\left(x-\dfrac{1}{4}\right)^2=-2x^2+x-\dfrac{1}{8}\)だから,
\(-2x^2+x-1=-2\left(x-\dfrac{1}{4}\right)^2-\dfrac{7}{8}\)

教科書にウソは書いていないが, その分,最大公約数的な記述になっている。
平方完成は,堅実な計算力があれば,ほんの少しの記憶ですむ。
脳を使うというのはそういうことである。
ある教科書の記述

\(-2x^2+x-1=-2\left(x^2-\dfrac{1}{2}x\right)-1\) \(=-2\left\{\left(x-\dfrac{1}{4}\right)^2-\dfrac{1}{16}\right\}-1\)
\(=-2\left(x-\dfrac{1}{4}\right)^2+\dfrac{1}{8}-1\) \(=-2\left(x-\dfrac{1}{4}\right)^2-\dfrac{7}{8}\)
それはまちがいではないよ。
どちらがいいかは,読者に任せよう。