160515 初版 160515 更新
自然数 n は3の倍数である のように,文字の性質を規定したものを条件といいます。
条件を満たす集まりを考えると,
集合になることがあります。
15 は 3の倍数である のように,真(正しい)か偽(正しくない)か判断できる文を
命題といいます。16 は3の倍数である は偽の命題です。
9 は 10 に近い数である は命題ではありません。
命題は,n は 6の倍数である ならば n は3の倍数である のように,
2つの条件を組み合わせて 「ならば」 で結ばれている文が多いです。
命題 p ならば q において,
条件p を命題の仮定,条件q を命題の結論と呼びます。
命題 p ならば q が真であるとは,p を満たすものはひとつの例外もなく q を満たしていることをいいます。条件p, q を満たす集合をそれぞれP, Q とすると,
これは,集合P が 集合Q の部分集合であるということと同じです。
このように,素朴な論理は素朴集合論とほとんど同じです。
整数nが,n は 6 の倍数であるならば,n は3 の倍数である は真の命題です。
n は素数であるならば,n は奇数である は偽の命題です。
整数 n についての命題,
命題①: n は6 の倍数ならば,n は3 の倍数である
命題① は真である命題でした。
この命題の仮定と結論を入れ替えた命題,すなわち
命題②: n は3 の倍数ならば,n は6 の倍数である
を考えて,① と ② は互いに逆の命題であるといいます。
例えば,3 は 3の倍数ですが,6の倍数ではありません。
したがって,命題② は偽です。
このように,仮定を満たすが,結論の条件を満たさない例を反例と呼んでいます。
日本語は語順にこだわりが薄いので,元の命題と逆の命題は同じに聞こえることがありますが,
注意が必要です。
命題③: n は6 の倍数ではないならば,n は3 の倍数ではない
のように,仮定の条件を否定したものを仮定,
結論の条件を否定したものを結論とした命題を考えて,
2つの命題① と ③ は裏の関係であるといいます。
命題③ は偽の命題です。なぜなら,
反例として3 が挙げられるからです。3は 6の倍数ではありませんが,3の倍数です。
日本語はともすると,命題① と③ が同じ意味に聞こえることがあるので,
注意が必要です。真偽が一致しないことがあります。
数学ができる人はいい人である と 数学ができない人は悪い人である は
同じ意味に聞こえることがありますが,論理的には同じではありません。
2つの命題② と ③ の関係を 対偶 と呼んでいます。
数学用語と日常用語は必ずしも一致しないので,数学で用語を使う場合には注意が必要ですし,
このように日常では使わない用語も出てきます。
元の命題が偽であるとすると,その反例と同じものが必ず対偶の命題の反例になります。
\(P\) が\(Q\) の部分集合である (\(P\subset Q\))とすると,
必ず \(\overline{Q}\) は \(\overline{P}\) の部分集合になります。
(\(\overline{P}\supset\overline{Q}\)) .
元の命題とその対偶は真偽が必ず一致します。
命題④: n は3 の倍数ではないならば,n は6 の倍数ではない
2つの命題④ と ① は対偶の関係にあります。
④ は真の命題です。
n は整数であることを前提として,
2つの条件 p: n は6の倍数である, q: n は3の倍数である について
命題①: n は6 の倍数であるならば,n は3 の倍数である 真の命題
命題②: n は3 の倍数であるならば,n は6 の倍数である 偽の命題
命題③: n は6 の倍数ではないならば,n は3 の倍数ではない 偽の命題
命題④: n は3 の倍数ではないならば,n は6 の倍数ではない 真の命題
でした。
このとき,n が6の倍数であることは,n が3の倍数であることの
十分ではあるが必要ではない条件といいます。
n が3の倍数であることは,n が6の倍数であることの
必要ではあるが十分ではない条件といいます。
必要条件,十分条件という言葉は,2つの条件の強弱を表しているといえます。
n は整数であることを前提として,
命題⑤: n は4 の倍数かつ6 の倍数であるならば,n は12 の倍数である 真の命題
命題⑥: n は12 の倍数であるならば,n は4 の倍数かつ6 の倍数である 真の命題
このとき,n が4の倍数かつ6の倍数であることは,n が12の倍数であることの
必要十分条件といいます。
2つの条件は同値であるともいいます。
命題: n は12 の倍数でない ならば nは 4 の倍数ではないかつ6 の倍数ではない
は偽の命題です。
6 は12の倍数ではありません。
4 の倍数ではないのですが6の倍数ですので,結論の条件は満たしません。
「4の倍数ではないかまたは6の倍数ではない」が「4の倍数であるかつ6の倍数である」の否定と同値な条件です。
このことは
ド・モルガンの法則と呼ばれています。
命題⑥ の裏は,
命題⑦: n は 12の倍数でない ならば n は4 の倍数ではないまたは6 の倍数ではない 真の命題
となります。