abstract  151212 第2版 151223 更新
プロジェクタのある授業

はじめに
授業時間すべてにプロジェクタがあったら…
何ができるか。 生徒への効果はどのようなものがあるか。 授業者への負担はどのようなものがあるか。
その他,実施してみて,問題点・課題を見つける。
平成25年度 2次特編(26年2月) 問題演習の解説時に使用。
昨年度は,2年普通科理系1クラス,文系1クラス,それぞれ6単位のほぼすべての授業, 合計で 400回程度 実施。
今年度は,1年普通科1クラス,理数科1クラスのほぼすべての授業で実施。 その他,土曜講習でも用いている。

結論
教科書を投影して,アンダーラインを引くだけで, 授業は変わる。
それを最初の一歩として,せっかくだからいろいろなことを試してみた。
成果 感想 何が何でもICTの活用しなくてはならないとは思わない。 プロジェクタを持っていけば,ICTの活用かよ という批判もないわけではない。 プロジェクタがない授業はもはや古い とは言わない。 板書が教師からも生徒からも奪っている時間を, プロジェクタを持っていくと取り戻すことができる。 その作られた時間を何に使うかが本当の課題である。 黒板は本来対話のためのツールだ というのにも気づかされた。

心がけ

授業改善
プロジェクタを使うと, どんなことが改善できるか具体的に述べる。
● 知識を活用する時間を作り出す
アクティブラーニングの掛け声は, buzzword (バズワード)的な響きを感じるのだが, 知識を覚える,身に着けることが学習の目的ではなく, どうやって発見・構築するか,どこにあるか,どうやって使うかを 授業中に体験させる という授業改善が大事だということだろう。
● 生徒の手元にあるものと同じものを投影すると …
教科書を投影して,アンダーラインを引くだけでも十分すぎるほど効果がある。 概念・知識を獲得するときに有効な仕掛け。
伝えたいことが,教科書の記述以外にあるのならば, 教師が板書する → 生徒がノートに複写する より,プリントを配布して 同じものを投影しながらポイントを解説するほうがよい。
● 板書量が激減する
学力がある生徒で, 黒板を写せばよいというpassive(受動的)な授業を期待している生徒は向上しない。 受動的な授業は生徒に楽をさせている。 自分たちのやるべき最も大事なことを教師がやってくれているのだから。 いわゆる板書計画が,教師が知識をまとめて,再構築する行為にとどまっていたら, それは,本来は学習者がやるべきことではないか。 毎日,メモのような板書や口頭での補足をまとめる行為の積み重ねは大きい。 手書きによる正解例の配布と合わせて, 答案の作り方がうまくなる。
● 印刷物では理解が困難なものに対して
狭義のICTの活用で,やはり価値はある。 多少技術が必要で,これだけを目的にすると, このために機器を持っていく → ならやめた というように,逆に,ICT導入の障壁になるかもしれない。
● 惜しい答案を投影すると …
2番手生徒の学力向上にかなり有効な仕掛け。 問題添削と関連するが, 惜しい答案の改善点を指摘すると本人にも周囲にもよい影響がある。 生徒どうしの関係に留意することは必要である。
教師が模範演技を見せるよりも, 同世代の答案は,学習者にとっては身近に感じてよいもののようだ。 それが,よくできた正解よりも,改善点のあるほうがさらに教育効果が高い。

具体的な方法・アプリケーション・技術
● PDF(結局は画像) ファイル
● PDF 閲覧アプリ
Metamoji Note (iOS 他), PDF Expert (iOS)
● クラウド
● スキャナなど
● 数式表示や簡単なプログラミング

課題
● 環境整備 1
教材は各先生が使いやすいように工夫するべきだが, プロジェクタがいつでも使える状態の教室を 少なくとも2,3部屋は整備するべきである。 プロジェクタが 最初から存在している状態で,使うか使わないかを選択することのほうが 確かに壁は低い。
● 環境整備 2
タブレットは教員全員に配布するのが理想である。
ICTの活用を促すのならば, 少なくとも教師には全員tabletを配布するくらいでなければ永遠に無理。 使うか使わないかは先生次第ですよ という環境にするべきである。 なくてはやっていけない というときには遅い。 また,私たちは気を付けながら,個人持ちの機器を使っているが, 大勢の人がそんなことをやり始めると必ず事故が起きる。 あわせて,自由にインターネット,クラウドに接続できる状況を 早く構築するべきである。
● 環境整備 3
今の程度のディジタル教科書なら私には不要である。 手軽に同じようなことを実施したい, あるいは, 教科によっては, ちゃんと購入したほうがいろいろな問題がクリアになるだろう。

多少詳しいこと