120923 初版

MathJaxがあまりにいいので, 調子に乗って書いてみる
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120919の問題について

問題を配り続けて早半年。 何題配ったかは,私もわからない。 そのうちちゃんと数えてみよう。
おかげで,諸君の数学の学力は飛躍的に伸びてきた。 ちゃんと取り組んできた人は大いに自慢していい。

これを機会にすこし改善してみようと思う。
まず,提出する前にきちんと見直したほうがいい。 ズコー(AA後日)という,あまりにくだらない計算ミスがある。 普通の文章であれば誤字脱字のたぐいである。
テストなど時間のないときならいざ知らず, レポートのような形式を取っているのだから, ちゃんと読み返したほうがいい。 この形式の場合,不正解のほとんどはこれで改善できる。
また,論理の飛躍も読み返すことで改善できる。
この文章ももちろん練ってある。推敲を重ねてある。 人に読んでもらうのだから当たり前のことである。

私も,授業中に提出を求める小テスト, 小レポート(いいネーミングだ)のようなものを含めて, 毎日100枚程度のプリントを見ている。
結構楽しいし,充実しているし, 趣味のようになっている。 なぜ楽しいかといえば, 答案を通じて,諸君の性格が読み取れるからである。 そして,もちろん力がついていっているのが手に取るようにわかるからである。
授業だけで数学の力なんて絶対につかない。 授業は知識伝達はできるが,自分で考えることは授かるものではない。 授業はできるだけ淡々と大切なことのみ提示していくことにとどめたい。

だんだん道具がそろってきて, それに伴って問題が複雑になってくると, 私たちの解説も必要になってくると思う。
だから,思いついたときに, web logを綴っていこうと思った。
計算は省略しているが, 論点はできるだけ細かく記載しようと思う。 題材の数学的な本質が現れる解説にしていきたい。 また,別の見方をできるだけ提示したい。
学習者にありがちな誤解だが, できるだけ簡単な方法は, その問題にしか使えないことが多い。
実際に諸君に講義している人物が, できるだけ自然に問題を解くと,こうなるというのを提示していく。
読み手の諸君は自分なりの解答を作ることをすすめる。

(本当にイイタイコトは学習の方法だったりする)

さて,
\(\sin 3\alpha+\sin 2\alpha=0\)を示せ
と要求されている。
これをさすがに方程式と思う人はいないだろう。まあ,問題は
\(\alpha=\dfrac{2}{5}\pi\)のとき,\(\sin 3\alpha+\sin 2\alpha=0\)を示せ
とかいてあるしな。

まず,こんな答案はどうだろう。
\(\sin 3\alpha+\sin 2\alpha=\sin 2\pi=0\)
念のためいっておくが,式としては正しいが, 採点者としては,微妙である。たぶん採ってもらえない。
書いた人は,\(\sin 3\alpha+\sin 2\alpha\)と\(\sin 5\alpha\)が どんな\(\alpha\)でも等しいと思っているんじゃないの,と 採点者に思われる虞があるから。
そういう有名な誤答があるというのを知っておけば, それを避けた答案を書いたほうがいいと思う。
何度もいうが,学習者はまず自分をさらけだしたほうがいい。 私たちはコーチであるが,レフリーでもある。

この式をみると和→積の公式を使いたくなるようだ。
\(\sin 3\alpha+\sin 2\alpha=2\sin\dfrac{5}{2}\alpha\ \cos\dfrac{1}{2}\alpha\) \(=2\sin5\pi\ \cos\dfrac{\pi}{5}=0\)

このページは解説というより,講評かもしれないが,
案外多くの生徒は,

\(\sin 3\alpha+\sin 2\alpha\) もとの式は書きたいな ある意味,仮定だから
\(=\sin \dfrac{6\pi}{5}+\sin \dfrac{4\pi}{5}\) ここからいろんな変形があったが
\(=\sin \left(\pi+\dfrac{\pi}{5}\right)+\sin \left(\pi-\dfrac{\pi}{5}\right)\)
\(=\sin \left(-\dfrac{\pi}{5}\right)+\sin\dfrac{\pi}{5}=0\)
この変形は感動した。

\(\sin(\pi+\theta)=-\sin\theta\)などの三角関数の性質Bは, グラフの対称性で頭にいれておきたい三角関数の本質である。
(もちろんグラフの対称性は,三角関数の円を用いた定義から導出される。)
このたぐいの式は,一度では頭に入らないが, 折に触れて存在を思い起こしたほうがいい。 ひょっとしたら,三角関数の中でかなり重い位をもっているかもしれない。 この一般化が加法定理だということもできる。 このような問題で使えるのはすごいと思う。
\(\sin(2\pi-\theta)=-\sin\theta\) (cf. 三角関数の性質B)を使っている答案もあった。 これも同様にオリジナリティがあってすばらしい。 いろいろな見方があるので, 正解例を覚えるより,まずレフリーにみてもらうのがいい。 諸君ならもうそのレベルである。

(2)は3倍角2倍角の公式を使うのが常套である。 でも覚えていなくてもいい。 2倍角の公式くらいは覚えたほうがいいが。

\(\sin 3\alpha+\sin 2\alpha\) \(=\sin(2\alpha+\alpha)+\sin 2\alpha\) \(=\sin 2\alpha\ \cos\alpha+\cos 2\alpha\ \sin\alpha+\sin 2\alpha\)
\(=\sin \alpha (4\cos^2\alpha+2\cos\alpha-1)\)
\(\sin\alpha\)は0でないから, \(4\cos^2\alpha+2\cos\alpha-1=0\)
\(\cos\alpha>0\)で,この方程式を解いて\(\cos\alpha=\dfrac{-1+\sqrt{5}}{4}\)

よくある3倍角の公式を使って,
\(\sin 3\alpha+\sin 2\alpha=3\sin \alpha -4\sin^3\alpha+2\sin \alpha\ \cos\alpha=\cdots\)
と変形するのとどちらがよいか知らぬが,
少なくともこの問題では,3倍角 の公式を知らないと解けない,とはいえない。 (1)で和→積の公式は知らなくてもいいのと同じことである。

正五角形ABCDEの一辺の長さ\(a\)を求めてみる。
正五角形の外接円(半径は1としている)の中心をOとすると,

三角形OABはOA=OB=1, 角AOBの大きさは\(\dfrac{2}{5}\pi(=\alpha)\)の 二等辺三角形 であるから
余弦定理を用いて, \(a^2=1^2+1^2-2\cos\alpha\)
この式の値は\(\dfrac{5-\sqrt{5}}{2}\)だから,\(a>0\)なので, \(a=\sqrt{\dfrac{5-\sqrt{5}}{2}}\)

最後にACの長さを求めてみる。
三角形OACはOA=OC=1, 角AOCの大きさは\(2\alpha\)の 二等辺三角形 だから,先ほどと同じようにもできるが,

ACの中点をMとして, 三角形OAMが 直角三角形 であることを用いると,
\(\dfrac{\rm AC}{2}=1\cdot \sin \alpha\)
ここで,\(\sin\alpha^2=1-\cos^2\alpha\)
\(=1-\dfrac{1}{4}(-2\cos\alpha+1)\) この