Kanazawa's convolution

\(S_n=1\cdot n+2\cdot(n-1)+3\cdot(n-2)+\cdots+(n-1)\cdot 2+n\cdot 1\)
これは,例えば数研出版青チャート数学II+B なら p.497の基本例題102 です。 有名な問題ですが,西條先生に指摘されるまで,dull なただの計算練習だと思っていました。
 カタラン数の計算をしているときに, 次の式に気がつきました。
1 + 3 + 6 + 10 + 15 + 21 + 28 = 84
見やすくするために 二項係数を \({}_n{\rm C}_r = \left(\begin{array}{c} n\cr r\cr \end{array}\right)\) と書くことにします。
\( \left(\begin{array}{c} 2\cr 2\cr \end{array}\right) +\left(\begin{array}{c} 3\cr 2\cr \end{array}\right) +\left(\begin{array}{c} 4\cr 2\cr \end{array}\right) +\left(\begin{array}{c} 5\cr 2\cr \end{array}\right) +\left(\begin{array}{c} 6\cr 2\cr \end{array}\right) +\left(\begin{array}{c} 7\cr 2\cr \end{array}\right) +\left(\begin{array}{c} 8\cr 2\cr \end{array}\right) =\left(\begin{array}{c} 9\cr 3\cr \end{array}\right) \)
1 1
1 2 1
1 3 3 1
1 4 6 4 1
1 5 10 10 5 1
1 6 15 20 15 6 1
1 7 21 35 35 21 7 1
1 8 28 56 70 56 28 8 1
1 9 36 84 126 126 84 36 9 1
 当たり前といわれれば,それまでです。 生徒でもそういう人がいますし,中には先生でもそういう人がいます。 問題は気がついた人がまずたたえられるべきだと思います。 N高校で現象に気づいた生徒も, 畳み込みじゃないかといった金沢先生も鋭いですよね。 日常でも同じですが, 問題だと思わないほうが,問題だ。 問題を見過ごしているほうが,問題だ。 私は,再発見という言葉を使いますが, 言われてから 当たり前だよ というより, 気が付いたことに意味があると思います。
 実は私は,幼いころ なぜなぜ どうして君 ではありませんでした。 誰かの疑問に対する答えを考える側で, 夏休みの宿題の自由研究なんかは得意ではありませんでした。 ずっと尾を引いていて,前期博士課程でも, 問題を見つけるのは下手でした。 高教研の研究集録にもたびたび寄稿していますが, ほとんどが誰かが出した問題の考察に過ぎません。
 今日の話で何度か出てくるのですが, 中等教育での数学は問題解決の姿勢を学ぶ教科だと思っています。 解決の方法,手法という言葉がありますが, それよりも一段上のレベルの言葉として,私は, 姿勢 という語を使っています。 そして,問題を見つける観察眼とそれを解決する力とは両輪だと思っています。 今回,この一連のメールのやり取りが面白かったのは, みんなで,問題を見つけて解決していくという過程を体験したという点にある気がしています。 問題そのものも面白いですが, この一連の過程を生徒に体験させてあげたいものだと思います。
 これからの学校教育は,すべて 問題解決学習 になると感じています。 ほぼすべての教科で,
何が問題でそれをどうやって解決してきたのか
その人類の足跡を辿る,再現するような学習形態になるのではないかと思っています。 再発見としっかりとした理由づけで十分だと思っています。 以前,表を用いた関数の指導という話を北陸四県で発表した際に, 知識を生徒が自ら獲得したことにする という話をしたら, 石川県の指導主事は大変興味を持っていただき,記録に残っています。 アクティブ・ラーニングのキーワードだと思っています。
 別の言い方をすると,壁を作っておいて生徒にそれを乗り越えさせる  この体験をさせる場が学校なのではないかと思います。 昨今の生徒,保護者の考えは逆で, 大人が壁を取り除いてあげている。 また,学校は便利で快適なところでなければならないと思っている。 教育はサービス業だと思われている。 何かが,間違っている気がしています。 能力に合わせて,壁の高さを変えてあげるだけです。  高等学校での数学の授業も
定義 → 定理 → 証明 の形式ではなくて,
問題 → 解決策 → 整理 → 定義・性質 → 証明 および  定理や獲得した知恵の問題解決への応用 になるのではないかと思います。
 まだ,私の中では アクティブ・ラーニング という言葉は整理しきれていません。 先日の高教研で,上杉先生や西村先生の指摘のようなものだろうと思っていますが, 私の感触では,すでにある知識を整理した形で学ぼうという コンピュータにデータベースを構築するような手法ではなく, 問題を解決しようと試みて, そこから知恵を獲得しようという 能動的な学習方法なのではないかと解釈しています。

つづく