学校設定科目 数理科学

 ここでは,本校の学校設定科目 数理科学 について, 導入理由と内容を紹介したいと思っています。
 本校は 2002年(H14) にスーパーサイエンスハイスクール事業が 立ち上がったときの最初の指定校のうちの一校です。 その後,休止期間を経て,2013年度から2期目が始まっています。
 私自身は前任校で SSHと数学のかかわり を探るために, 岐阜県立恵那高等学校と奈良女子大学附属中等教育学校を訪問させて いただきました。 昨年は,筑波大学附属駒場中・高等学校のSSH数学教員研修会に参加させていただきました。 先進的な理数教育は数学からという思いがますます強くなっています。
 2010年に本校に赴任して驚いたのは,理科を中心とする理数科の 課題研究発表会です。 本校の理科の教員の力量は同僚ながら驚くほど高いものがあります。 生徒もそれによく応えている。
 研究テーマを見つけ上手に設定して,観察・実験を粘り強く行い, 仮説を立て,それをさらに観察・実験で検証していく。
 これが,サイエンスなのだと思います。 でも,何かが足りないと思いませんか? 私たちは,数学教員であることに強い自負があると思うのですが, 数学は 予想は実験ではなく,論理のみで正しいか否か説明することができる  という点が最大の魅力なのだと思います。
 現場にいて,生徒や社会情勢を見ていると, 学校教育のすべては問題解決学習になる  と私も実感しています。 人類が問題を解決してきた足跡を辿る そのような場になるのではないか  また,なるべきではないか と思っています。 その中心を担うのが 数学教育 だと確信しています。
 言うまでもなく,数学は 問題にアタックするために理論が作られる  あるいは,問題を解決したプロセスを整理したものが定義や定理であります。 いくつかの事例から,一般化・定式化して,それを論理で証明する。 大手前高校でのマス・フェスタを見学させていただくと, 高校生でも定理を発見する人がいます。 その人は,なにがうまいかというと定義 が上手です。 現象を観察して数学の言葉で説明するための一歩なのでしょう。
 このごろ授業中に問題解決という語 (2つの使い方)を繰り返しています。 生徒は 自分で思索したことを説明するのは上手なのですが, 未知数を設定する → 満たすべき式をつくる → 計算で要求にこたえる という流れをしたがらない。 何かうまい手があって, ともすると 自動的に答えが出てくると思っているのではないかと 感じるくらいです。 理数科の生徒でも学力の低い生徒はその傾向が強い。
 未知数・変数を設定する → 満たすべき式をつくる  は 問題を数学に乗せる点で大変重要な流れだと思っています。 この頃は,単に角の大きさを求めるいわゆる求値問題でも  これが θ の満たすべき式である という言葉を繰り返しています。
 微分方程式に限らず 変数の満たすべき式をつくる それは予想でもよいのですが, これがまさに 現象の数理化 です。
 三角比の正弦定理,余弦定理でもまず具体例から入って一般化・定式化する。 整数の性質でもやはり具体例から一般化・定式化する そこまでなら 小・中学校でもやっている。 それを高校では,ある程度しっかり説明を付ける。 これが,スパイラルな学びであり, 問題 → 解法の整理 → 定式化 → 証明 の流れは, 問題に生徒自らが能動的にアタックして, その解決過程から知識を獲得するという意味で, いわゆるひとつのアクティブ・ラーニング なのではないかと思っています。

つづく