数学的帰納法

160502 初版 160502 更新
すべての自然数 n について,
等式 \(\displaystyle{1\cdot 2+2\cdot 3+3\cdot 4+\cdots+n(n+1)=\dfrac{1}{3}n(n+1)(n+2)}\)
が成り立つことを証明せよ。
 このような命題があったとします。 数学的帰納法という証明方法で説明してみましょう。
 この等式を成り立たせる n の集まりを集合A とします。 (このような集まりを解集合ということがあります。) 集合A は自然数の集合の部分集合です。 A は自然数全体と等しい というのが命題の主張です。
\(\displaystyle{S(n)=\sum_{k=1}^n k(k+1)}\) (Σ記号について), \(T(n)=\dfrac{1}{3}n(n+1)(n+2)\) とおきます。
集合の記号で表すと A = {n| S(n) = T(n)} とおいているということです。 自然数の集合は, \(\mathbb{N}\) と書くことが多いです。 命題の結論は,\(A=\mathbb{N}\) ということです。
これをいうためには 集合A の構成規則が自然数の構成規則(Peanoの公理)と同じことをいえばよい  これが数学的帰納法の原理です。(Peano)
すなわち,
1 がA に属すること
k がA に属するとした(帰納法の仮定)ならば k + 1 はA に属すること
この2つをいえばよいことになります。
 まず,1 は A に属することをいいます。
\(S(1)=1\cdot 2 = 2\)
\(T(1)=\dfrac{1}{3}\cdot 1\cdot 2\cdot 3 = 2\)
ですから,1 ∈A (1 は A の要素である。) がいえました。
 次に,k が A に属するとしたならば k + 1 はA に属することをいいます。
\(S(k+1)=S(k)+(k+1)(k+2)\)
\(=\dfrac{1}{3}k(k+1)(k+2)+(k+1)(k+2)\)  (なぜなら k∈ A ならば \(S(k)=T(k)\) だから)
\(=\dfrac{1}{3}(k+1)(k+2)(k+3)=T(k+1)\)
ですから, k∈ A ならば k + 1 ∈ A であることがいえました。
 したがって,\(A=\mathbb{N}\) がいえました。 すなわち, すべての自然数について等式が成り立つことがいえたことになります。