写像

160515 初版 160515 更新
 集合A, B をともに整数全体の集合とします。 Aの要素 a に対して B の要素 4a を対応させます。 この対応を f として,f(a) = 4a と書きます。 集合 A の要素から 集合 B の要素への対応 f で, A の要素に対して,B の要素が1つだけ決まるとき, f は関数であるといいます。 写像であるともいいます。 f(a) を a の像といいます。 a ≠ b ならば f(a) ≠ f(b) が成り立つとき, f は単射であるといいます。 対偶 をとると, 単射であるとは, f(a) = f(b) ならば a = b が成り立つことだといえます。
 B の要素 b に対して,f(a) = b なる A の要素 a があるならば, a を b の逆像といいます。 f が単射ならば,b の逆像が1つに決まるので, f の逆対応は写像になります。 この対応 b↦ a を逆写像といい f-1 と書きます。 B の任意の要素に対して逆像が存在するとき, f は 全射であるといいます。 f の像が B 全体にわたるということです。 この例では,f は単射ですが,全射ではありません。
 数列は自然数の集合 \(\mathbb{N}\) から 実数の集合への写像とみることができます。
 集合S, T を S = {4n| n=1, 2, 3, 4, 5, 6, 7} すなわち {4, 8, 12, 16, 20, 24, 28}
T = {0, 1, 2, 3, 4, 5, 6} とします。 S の要素 a に対して T の要素 「a を 7 で割った余り」を対応させます。 S の2つの要素 a, b に対して, a, b を 7 で割った余りが等しいことは, a - b = 7k なる整数 k があることと同じことです。 このとき,a = 4a', b = 4b' とすると, 4(a' - b') = 7k. ここで,0 ≦ a' - b' < 7, 4 と 7 は互いに素ですから, a' = b' となります。 したがって,この対応は単射です。 S, T は要素の個数が等しいですから, 単射ならば全射になります。 逆も成り立ちます。このことは鳩の巣原理と呼ばれています。 このとき,T の任意の要素に逆像があります。
実際,
S 4 8 12 16 20 24 28
T 4 1 5 2 6 3 0
 集合S, T を S = \(\mathbb{Z}\) (整数全体),  T = {0, 1, 2, 3, 4, 5, 6} とします。 S の要素 a に対して T の要素 「4a を 7 で割った余り」を対応させます。 先ほどの考察により,この対応は全射です。 つまり,T の任意の要素に逆像があります。
 集合S, T を S = {4n| n=1, 2, 3, 4, 5, 6} すなわち {4, 8, 12, 16, 20, 24}
T = {0, 1, 2, 3, 4, 5} とします。 S の要素 a に対して T の要素 「a を 6 で割った余り」を対応させます。 この対応は単射ではありません。 したがって,全射でもありません。
実際,
S 4 8 12 16 20 24
T 4 2 0 4 2 0