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161210 初版 161210 更新
高校で学習する数学でベクトルは印象が強いようです。
日常の用語でもよく使われています。
有向線分(矢線ベクトル,幾何ベクトル)から始まって,
その中から代数的な特徴を整理して,一般化します。
また,図形を数式で表すことを学びます。
長さや角の大きさという量と内積との結びつき,
3点が同一直線上にあるということはどのような関係式で表されるか,
4点が同一平面上にあるということはどう表されるか。
知識として整理して,問題解決につなげます。
ものの様子を式で表すという考えを学びます。
2点A, Bがあったとき,
AからBに向かう有向線分 を →AB とかくことにします。
このとき,Aを始点,Bを終点といいます。
平行四辺形ABCDがあったとき,
→AB と →DC は
等しいと定義します。
2つの有向線分が平行移動で重なるとき,等しいと定義しているのです。
また,→AB と →CD は等しくありません。
→AB を →a とすると,
→DC は →a となります。
→a は →AB と等しい有向線分の代表とみることができます。
同様に,→AD=→b とおくと,
→BC=→b が成り立ちます。
3点A, B, Cがあったとき,
→AB と →BC の和を
→AB+→BC=→AC
と定義します。2つの矢印を継ぎ足しています。
一般に→a, →b の和は,
→a=→AB, →b=→BC となるように適切に3点をとって定義されます。
→a+→b と →b+→a は等しくなります。… ①
これは,平行四辺形ABCDについて,
→AB+→BC と
→AD+→DC は同じく
→AC であることからいえます。
(→a+→b)+→c と →a+(→b+→c)
は等しくなります。… ②
したがって,→a+→b+→c とかくことができますし,
① ② により,加法は順序によりません。
始点と終点が一致しているベクトルを零ベクトルといいます。
→AA=→0
→AB=→a とすると,
→BA は −→a とかくことができます。
→a の逆ベクトルといいます。
→AB+→BA=→AA なので妥当な定義です。
平行四辺形ABCDにおいて,
また,→AB=→a とすると,
→CD=−→a
→OA+→AB=→OB ですから,
→OA+→AB+→AO=→OB+→AO
→AB+→OA+→AO=→OB+→AO
したがって,
→AB=→OB−→OA
この式より,減法は,逆ベクトルの継足し,
あるいは,点の移動量とみることができます。
例えば,台形ABCD で 辺AB と CD が平行であるとします。
また,AB : CD = 3 : 5 とします。
このとき,
→DC=53→AB とかきます。
→CD=−53→AB
2つのベクトルが同じ向きのとき,正の実数倍で表せると定義します。
正反対の向きは負の実数倍です。
実数倍については,次のような性質が成り立ちます。
k(l→a)=(kl)→a
k(→a+→b)=k→a+k→b
(k+l)→a=k→a+l→a
以上のことは,ベクトルは R - 加群の構造をもつといいます。
すなわち,
加法に対して順序によらず,
実数倍の展開,
同類項をまとめることができて,
一次方程式 k→x+→a=→b を満たす→x を求めることができます。