対数関数

160809 初版 160809 更新
 集合Aを実数全体, 集合Bを正の数全体とします。 Aの要素 x に対して,2x を結びつけるとこれはBの要素になります。
A -2 -1 0 \(\dfrac{1}{2}\) 1 \(\dfrac{3}{2}\) 2 3 4 5
B \(\dfrac{1}{4}\) \(\dfrac{1}{2}\) 1 \(\sqrt{2}\) 2 \(2\sqrt{2}\) 4 8 16 32
この対応① を f とします。f(x) = 2x
f は単射で,f(m + n) = f(m)・f(n) が成り立ちます。
A m n m + n m + 1
B M N M・N 2M
 この逆対応② を考えます。 正の数全体である集合Bの要素 x に対して, 実数全体である集合A の要素は 1対1 に結びついて,
B \(\dfrac{1}{4}\) \(\dfrac{1}{2}\) 1 \(\sqrt{2}\) 2 \(2\sqrt{2}\) 4 8 16 32
A -2 -1 0 \(\dfrac{1}{2}\) 1 \(\dfrac{3}{2}\) 2 3 4 5
B の要素 x に対応するA の値 f-1(x) を,
底を2 としたときの,x の対数(logarithm of x to the base 2, the base 2 logarithm of x)といいます。
 一般に \(a^r=R\) のときに,\(r=\log_aR\) となります。
対数とは,Bの要素の正の数を あるものさし で計っている感覚です。 対数スケールでみる と呼んでいます。 底が2の対数スケールで計った値が, 対応表② だといえます。
 対応f はA における加法とB における乗法と可換な準同型写像でしたから,
対数の性質③ \(\log_a MN=\log_aM+\log_aN\) が成り立ちます。
対応表② において, Bにおいて値が2倍になると,対応する対数は 1 増えるといえます。
B M N M・N 2M
A m n m + n m + 1
 対数は Napier が発見したといわれています。 性質③ によって,Bの世界における乗除が, Aの世界における加減になりますので, ②のような対数表があれば, 計算がずいぶん楽になります。 計算機のない時代には,大きな出来事でした。 さらに,計算尺が発明されると, 乗除はものさしのスライドで求めることができました。
 これは,計算機のある現代からすると,おとぎ話の世界です。 残念ながらありがたみはわきません。 現代は対数は用無しかといわれれば, そんなことはなく, 自然現象の多くは指数関数で表されますから, それを,線形的にとらえるには,対数スケールで計るという見方が 大切になります。
 人の感覚は足し算の世界ではないようです (Weber-Fechnerの法則)。 例えば,音の高さ,大きさは人は差ではなくて,比でとらえています。 440 Hz はA4,C4は 約523.25 Hz ですが, 880 Hz はA5, C5は 約1046.5 Hz です。 音圧では,20dB違うと10倍,40dB差で100倍の違いがあります。 音階,デシベルは対数の考えであるといえます。
対数の性質
\(\log_aMN=\log_aM+\log_aN\),  \(\log_a\dfrac{M}{N}=\log_aM-\log_aN\),  \(\log_aM^p=p\log_aM\)
 集合B の要素を異なる底の対数スケールで計ってみましょう。
B \(\dfrac{1}{4}\) \(\dfrac{1}{2}\) 1 \(\sqrt{2}\) 2 \(2\sqrt{2}\) 4 8 16 32
base 2 -2 -1 0 \(\dfrac{1}{2}\) 1 \(\dfrac{3}{2}\) 2 3 4 5
base 4 -1 \(-\dfrac{1}{2}\) 0 \(\dfrac{1}{4}\) \(\dfrac{1}{2}\) \(\dfrac{3}{4}\) 1 \(\dfrac{3}{2}\) 2 \(\dfrac{5}{2}\)
底が2 のものさしで計って1増えるということは,Bの世界では2倍です。 底が4 のものさしで計って1増えるということは,Bの世界では4倍です。
一般に,底の変換公式と呼んでいます。
\(\log_ab=\dfrac{\log_cb}{\log_ca}\)
対数は実質1種類しかありません。 底としては10, 2, e (Napier数) がよく用いられます。 \(\log_{10}x\) を常用対数,\(\log_ex\) を自然対数と呼んでいます。