http://goo.gl/MFRFj 121123 初版 121208 更新
先日SEMなる数学の先生の集まりにいてきた。
私が新採用のころからその存在は知っていたし, いきたいと思っていたが, 遠いこともあったので,なかなか行きだせないでいた。
そうこうして20年が経った。 10年一昔というから, そう思うと結構笑える。
昔,ある漫画で二言目には教師生活25年と科白をはく, 先生が主人公たちの担任として描かれていたが,
私も最近は折に触れて, こんな仕事を20年もやってきたということにしている。
幸いなことに,その20年間, 数学がそれなりにわかる人を相手にしていたので, 楽しかったし,蓄積もある。 このweb pageはその恩返しでもあるし, 今回SEMにでて,をさせていただいたのは, 若手にそれをさしあげようという意図もある。
授業でよくプリントを配ったが, 生徒はやはり,教科書を信じる。
ところが,教科書は古い。 今回,学習指導要領を結構読み解いたが, 文部科学省はちゃんとしていて, 高い理想(だが無理ではない)を掲げている。 (ここここ) 問題は教科書と,現場の教員である。 特に,教科書は槍玉に挙げたい。
つね日ごろ,生徒諸君はいい迷惑だろうが, 私の放談に付き合ってもらっている。
だが,その会でY教授(ある小中学校の校長先生でもあるが)に, 声を掛けていただいた。 Y教授によると,医者を育てるような数学の教科書といっている。 Y教授は小中学校の算数・数学の教科書をよく書いていて, 私も自分の子どもを通じてそれを知っていたのだが, 小中学校の教科書より,高校の教科書はひどい。
Y教授は的確に述べられた。 数学を学ぶ理由のひとつとして, 数学は理論を作っていく模範であるからだ,と。
私の考えていることを一言で表していたただいたと,感謝する。
先の学習指導要領解説に書いてあり, 我が意を得たりと,引用させてもらった。
西洋は理論を作ってきたという歴史がある。 日本は所詮その輸入である。 日本の高校の数学の教科書は, 問題を解くために最低限必要なことと, 問題の解法例が書かれていて, 問題解決の手法に相当のページが割かれている。 それは,参考書で十分なのである。
おそらく,これからは, 理論化の過程が大切なのであって, 文部科学省は 先のここでちゃんと言っている。
このあたりは,理科の先生でも分からないかもしれない。 でも,数学の教員はわかるはずである。
このごろ,志村五郎先生の本も読んでいるが, 志村先生の本はところどころに, 先生の人柄が出ている文があって, 数学以上に面白い。
数学者の文章は,下手な職業随筆家のものより断然面白い。
今,ゆとり教育の見直しがされて, 特に,理科の指導内容が大幅に拡充された感がある。
私は,文科省はたぶん分かっているのではないかと思っているが, 教科書や現場が多少混乱している。
おそらく,(理科は分からないが)数学は この先10年くらいで,本当に学習指導要領の理念を生かすような, 教科書に変革がおこると考えている。
黒板とチョークと紙と鉛筆というスタイルの変革かもしれない (特に紙と鉛筆はなくなることはないでしょうが)。 けど,一番は理論を作っている過程をかいてあるものになるでしょう。
日本は,伝統的にそれがほとんどなかった。 私の仮説では,東アジアの国は,日本の手を使って, 急速に経済を成長させているが, 独自の哲学のない国(インドや中国はそれがある)は持続しない。
自らの哲学を持ち,他国(特に西洋)の哲学を学ぶのが, グローバル化の原点だと思う。
ほんと,明治の人はすごいと思う。
確かに江戸期の日本にも独自の文化は栄えたし, それなりの素地はあったのだが, 数年ヨーロッパに留学するだけで, 日本人になじむようにジャパナイズしてしまった。
でも,明治維新のときの国家戦略と, 太平洋戦争後の国家戦略は,いずれも目標とするものがあった。
今は,目標がない。 だから,国力の伸びがないのである。
哲学を学ぶのだと思う。
理科の課題研究を見ていると, 例えば,高度なもの,新発見であっても,
今までにないこんなものが分かりました。 こうやったら見つかりました。 まとめてみるとこんな感じです。
となる。
これが指摘されるSSHの限界といわれるものなのかと, このごろ思う。
私が,SSHに積極的に数学を入れていこうとしている理由でもある。 5年前(2007年ころ)にはやりきれなかったことである。
だから,高校の数学では, 温故知新(先日,JAXAの川口先生の講演を聞いたが(2度目), 先生は温故知新を否定しているように見えるが, それは古い知識は役に立たないという意味だと感じた)かなと思っている。 知識そのものではなくて, 知識に辿り着いた過程をなぞる必要があると考えている。 それは川口先生の考え方とも同じだと思う。
というわけで, その思想に基づいた講義録を作りたいと考えている。
プリントでは軽いので, できれば冊子, さらには, 思い立ったときに(tabletなんかで)見られるように, HTMLでこんなふうに書こうと思っている。
時間的な流れを作るにはアニメーションの工夫がいいと思っている。 紙の教科書だけでは足りなくて,生身の教員が要るのは, 止まっている教科書から思考過程を読み取るには, 高度な知的レベルが要求されるからだと思う。
だから相互にリンクのはれるHTMLでしかもHTML5はいいものだと思う。