パズルとコンピュータと数学

ものの様子
2x2x2 のルービックキューブは、見た通り立方体で、 6つの面がそれぞれの色に 塗り分けられています。
標準的な位置を、次のように定義します。
上が白、下は黄、左が青、右は緑、手前は橙、奥は赤
が と は とはわざと使い分けています。
数学って、知識や技術ではなくて、考えることだといいました。 今日、繰り返していう話です。 世の中の現象を見るときには、どうしてもその人の立場が出てきます。 国際的な話題になると、政治や宗教、民族の歴史など複雑な問題が絡んできます。 数学も、問題の解き方や問題の本質を見抜こうとする場合には、 解く人個人の好みが出てきますが、 他の人に解法を説明するときには、 一切、感情なく、論理のみで記述していきます。
数学は無味乾燥だといわれますが、 だから、立場を超えて話をすることができるのです。 教員と生徒との間でもそうです。 長岡高校の3年生にもなると、 問題に対してとてもいい解答を作ってくれる生徒がいます。 私たちは、じっくりと彼らの考えを聞いてあげます。 大学受験が間近になると、私たちよりもいい解答を作ってくることがあります。 悔しさも少しありますが、嬉しさのほうが勝ります。
相手に論理的に説明するときには、 定義が大切です。違う意味にとられないように、 気を付けて定義します。
今の話では、上下左右手前奥、これで、 3次元空間の向き、方向を誤解のないように定めています。 そして、標準的な位置としてのそれぞれの面の色を定義しました。
2x2x2 の場合、8個の小さい立方体から構成されます。
この1つ1つをコーナーキューブということにします。
3x3x3 など大きくなると、 色が塗られている面が2面や1面しかないミニキューブが存在します。
2x2x2 の場合は、8個のミニキューブはどれも3面色が塗られています。
8個のコーナーキューブに名前を付けます。
白青赤 白緑赤 白緑橙 白青橙
黄青赤 黄緑赤 黄緑橙 黄青橙

操作
ルービックキューブは面の回転操作ができるようになっています。 この部品としての構造が絶妙です。
3x3x3以上になると、操作も複雑になりますが、 2x2x2の場合は単純です。
操作を次の記号で表します。
L 左の面に対して その面を正面としたときに 時計回りに90度回転する
L' 左の面に対して その面を正面としたときに 反時計回りに90度回転する
R 右の面に対して その面を正面としたときに 時計回りに90度回転する
R' 右の面に対して その面を正面としたときに 反時計回りに90度回転する
L2 左の面に対して その面を正面としたときに 180度回転する
R2 右の面に対して その面を正面としたときに 180度回転する
U は上の面に対して、 D は下の面に対して
F は手前の面に対して、 B は奥の面に対して
U' や F2 など同じように使います。
数学はよく、次の4分野に分けられます。 もちろん現代ではきっちり区分けができるわけではありません。
代数 … ものへの作用を研究する
幾何 … ものの様子を研究する
解析 … ものの変化を研究する
確率・統計 … 不確実な事象を研究する
ルービックキューブは、面の回転という作用による、 面の色の様子を考察することになりますので、 まさしく、数学です。
高校入試の話を少しだけします。
昨年は、立方体を平面の上に転がして、 面の番号を記録する問題が出ていました。 数の和を求める問題もあったかな。 数年前から、このような問題がありますね。 正しく計算できたり、用語の知識があったり、 公式を覚えていて正しい場面で使えたり…。 数学の問題はそれだけではありません。 あの立方体の問題は何を見たいのか。 私が思うのは、立体の感覚と、規則性を見抜く力だと思います。 数学が暗記科目だと思っている人には解けないでしょう。 また、与えられたものをただ消化していくような勉強方法をしている人にも 不利でしょう。 普段からなぜなのだろうかと疑問に思って 授業をしっかり聞いていて、 言われてから理解するだけではなく 自分から主体的に勉強していないとね。 そして、この問題が素晴らしかったのは、 難しくないこと! 見たことがないからといって諦めて他の問題をやった人と、 まあやってみるかといって挑戦した人では、 後者のほうが有利にできている問題だからです。
今日の話題は、立体の感覚を付けるというのが、 目的のひとつです。
ちょっと、考察してみます。
標準的な位置におかれた立方体を、 真上から見て、全体を90度時計回りに回転させます。
この操作前の位置にあるキューブに対する、R という操作は、
操作後の位置にあるキューブに対する、Fという操作と、同じです。
言葉で言われて、理解できますか。 これが、立体に対する感覚です。 どちらも、緑の面を 90度時計回りに回していることと同じですからね。

つづく