プロジェクタのある授業

 先日,あるチョーク会社のニュースがありました。 特に数学では,黒板とチョークは必要不可欠ではないかと思っています。 問題解決のアプローチは, 対話の中で深まります。 そのときに,紙と鉛筆,黒板とチョークは欠かせないものです。 ホワイトボードではダメですよね。 タブレットもまだまだだと思います。 思考や対話を妨げる事態が起こる道具は本末転倒ですよね。
 この節の見出しは プロジェクタのある授業 としました。 ICTの活用 あるいは 電子黒板の活用 が叫ばれていますが, 特別なときの活用,言い換えれば活用の場面を探していることが 中心になっている気がしています。 昨年度は
プロジェクタを すべての時間に 持っていったら 何ができるだろうか
ということをテーマにして授業を行いました。 特別な準備はなるべくしない  機器の準備・撤収に休憩時間をなるべく使わない  将来的にすべての教員が使えるようななるべく自然な方法で  ということを心掛けています。 今年度もこれまでほとんどすべてプロジェクタのある授業を行いました。 このことについて, 私の実践例を公開して,情報交換をしたいと考えています。
 結論を言うと, プロジェクタのない授業はもはや考えられない できればしなくない からだになってしまいました。 板書量が激減しました。 まず,私が楽です。これは大切なことだと思っています。 先に書いたように,準備はほとんどしません。 板書が減ることによって,生徒が黒板を写すということが減って, 生徒自身で考える時間が増えました。 生徒がねなくなりました。 また,教科書のどこを見ていてどこが大切なのかよくわかる という感想を共通して生徒は持っています。
 プロジェクタは SSH で購入した 極短焦点のもの (EPSON EB-436WT) を使っています。 私は,プロジェクタ台を自前で買いましたが, 教卓から(黒板まで数十センチ)で十分投影できます。 スクリーンは黒板に磁石で張るいわゆるモバイルスクリーンを使っています。 スクリーンは黒板の左半分に張っています。 3000lm の機器ですが,短焦点のためか明るさが不十分だとは感じませんでした。 教室の普通のカーテンを黒板の付近だけ閉めています。 黒板の電灯もつけたままです。 この状態で1年間のほとんどの授業で大丈夫でした。
 基本は,教科書をいわゆる自炊したPDFファイルを投影しています。 教材を自炊してPDF化するのは,10年以上前からのアイディアで, 投影する以外にもいろいろ用途があります。 教科書会社に公式に聞けばどうかわかりません。 県内のほかの先生でも同じようにプロジェクタで投影している人が何人かいます。 (教科書はパブリックドメインにしてほしいと思っています) また,ちょっとしたことも,このように web server上に書いてしまえば, VPS 上に残っているので,クラウド的な利用 (例1  例2) ができます。 MathJax と HTML5 Canvas (例1  例2)はとてもありがたいです。 自炊した教科書を投影するのが授業の基本的な進め方です。
 ちょっと悔しいのですが,教科書はよくできています。 個人的には教科書の記述に不満もたくさんあるのですが, 生徒はやはり教科書で復習します。 また,研修などで板書改善 が話題になるのですが, このごろ私としてはその価値には懐疑的です。 超ベテランの先生の, 黒板にはなるべく書かないことにしている  という言葉にとても勇気づけられました。 板書を写して見返すと,問題をどうやって(先生が)解いたのか よく理解できるものは,生徒の受けは大変いいのですが, 生徒は理解できたことに喜びを感じているのであって, もちろんそれを全面的に否定するものではありませんが, やはり,数学は問題に対してどれだけ自分で考えることができたかが, 生徒の力になることに違いないと感じています。 開き直りもあるのですが, よくできた板書ほど生徒が自ら考えることを阻害している気がします。 それなら,教科書のほうがよっぽどよく書いてあります。

つづく