数学のQOL(学びの質)を上げるには

http://www.minamiazabu.net/math/kokken18-19/chap00/index.html
180424 初版 180428 更新

なぜ数学を学ぶか

 なぜ数学を学ぶのでしょうか。 数学を学ぶ目的は何でしょうか。 数学を学ぶと何ができるようになるのでしょうか。 答えは私にはわかりません。 正しいものはないかもしれません。 時代によって変わるものかもしれません。 皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
 今のところ,数学は 問題解決の姿勢 を学ぶ学問だと思っています。 問題は数学の問題に限りません。

問題解決の姿勢

 数学の問題に限らず, 問題は 設定と要求 からできていると思います。 問題解決は,問題の構造を読み取り, 設定から要求に応えるまで, 見通しを立て,習得した知識・技能を活用し, 用語を正しく使い,根拠を積み重ねながら,自分の考えを表現することだと思います。 習得している知識・技能(戦術)が多ければ, 見通し(作戦)も立ちます。 問題を解決したという経験が, さらなる知識・技能につながります。 自分はこれを知っている,これができるというメタ認知も必要です。 このような一連の経験を かずやかたち といった無味乾燥な数学の世界で行うのです。 感情を抜きにして純粋に 考えること を学びます。 おそらくそれが自由七科の中に算術・幾何と2つも数学の分野がある理由ではないかと思います。

高校で数学を学ぶ目標

 高校で数学を学ぶ目標は, 自分で考えて解ける問題 を増やすことです。 具体的には,1,2年生のうちは 教科書傍用問題集の問題で 自分で解ける問題を増やすことです。 これによって,知識・技能が習得され, 活用する力がついていきます。 他人との比較ではありません。 問題はたくさんあります。 全部解いてやろう という心意気は買いますが, 心が折れてしまうかもしれません。 ですから,自分で目標を立てて, 焦らず弛まずコツコツと問題を解くことだと思います。 時おり少し難しい問題に挑戦してみてください。 習得した知識・技能を活用する力が高まるはずです。

予習は大切です

 問題を解くには,問題の構造を読み解くことが一番大変です。 同じスタートラインに立つために,予め教科書などを読み, 問題についてどういうことなのか少し考えてみたり, 問題で使われている用語の意味を確認したりしてください。 これが予習です。

具体的な学習方法

 授業用ノートを作りましょう。
 予習をする際に練習問題をこのノートに解いておくことをすすめます。 予習は大切です。 練習問題が解けなくても,教科書を数ページ予め読んでおいてください。 教科書の練習問題が解けることが, 高校で数学ができるようになる第一歩です。
 授業用ノートには,私たちが話をしたり, 私たちの頭の中を視覚化した黒板に書かれていることを, 自分でまとめて書き留めておくとよいでしょう。 要約する能力は 生きる力 の一つだと思います。
 演習ノートを作りましょう。
 1,2年生の目標は, 教科書傍用問題集の問題で自力で解ける問題を増やすことだ と書きました。 演習ノートを定期テストごとに提出してください。 これだけ問題を解きました というのを披露してほしいと思います。 演習ノートには, 教科書傍用問題集の問題, 参考書の問題, 計算問題集の問題など 考査範囲の問題をとにかくたくさん解いて書き残してください。
 予習・復習の友 を上手に活用してください。
 自分で練習問題を解いて確認に使ってください。 授業で追いつかなかったことを復習に使うこともよいと思います。 ただ,写すことや理解しただけでは力はつきません。 納得することはいいことですが, 目標(自力で解ける問題を増やす)を忘れないでください。 たまに意図せずあるいは意図して間違っていることがあります。 間違いを正すことができたら本当の力です。 自分の答えと違っていたら(自分が間違っていたとしても) 力がつくチャンスです。 活字になっているものを信じて理解するだけ,写すだけでは 力はつきません。(大事なので2度書きました。) いろいろな意図をもってあえて手書きしています。
 参考書も目標(何だったっけ)を達成するためにあります。 この参考書は結構いいことが書いてあります。
 計算問題集はある意味これが必要最小限という問題が選ばれています。 この問題集の問題ができるようになると, 1,2年生としては合格です。
 朝学習は計算問題集からセレクトして出題されています。 ほぼ毎日の練習 は教科書傍用問題集からセレクトして出題しています。 この問題は特に大切だよ という私たちからのメッセージです。 ほぼ毎日の練習 は,確認テストの意味があります。 解いたら周囲の人と相互評価をしてもらいます。 完全な正解でなくても中間点(部分点)をつけてあげてください。 中間点の理由を説明してください。 問題とその解答について周囲の人と対話は, 価値のある時間です。
 週末課題も同様です。 課題は提出するのが目標の一つで目的ではありません。 数学の問題が解けるようになるのも目標の一つで 数学を学ぶ目的ではありません。
 正解例から学ぶ勉強法もすべて悪いとは言えませんが, 正解例がないと勉強できない ということは見直したほうがよいと思います。 予習・復習の友や詳解集の使い方を誤ると大変危険です。
 授業ではほとんどプロジェクターを使います。 投影する内容は教科書,プリント類と皆さんの手元にある内容です。 これについて話をしているのだ と手元にあるものを 一緒に見ているにすぎません。 黒板に書く内容は,私の頭の中で考えていることを皆さんに見せています。 口頭では表現しきれないことです。 私が教科書などの内容をまとめなおして板書することはありません。 ですから,見やすい板書などを心がけて授業はしません。 プロジェクターを用いている目的は,皆さんが考える時間をできるだけ増やすことにあります。
 数学を学ぶ目的の一つに,自分の考えを正確に表現すること があります。 ですから,数学の用語や式を正しく使うよう心がけてください。 また,図や表を適切に使うことも自分の考えを表現する有効な手段ですから, この技能を身につけると 生きる力 がつきます。

何はなくとも計算力

 数学の問題を解くための必要条件の一つに 高い計算力があります。
 どんな計算でも暗算でやろう
というのを究極の目標にしていいと思います。
それには 工夫 が必要かもしれません。 現実は難しいと思います。 暗算でできても間違えては何もなりません。 そのためには,後で自分で見返すことができるメモを残しておくとよいでしょう。
 数学ができる=計算が上手 ではありません。 ですが,見通しを立てる際, 推論する際には速く正確な計算力が欠かせません。 サッカーなどで得点を上げることを考えてみてください。 プレーヤー一人一人のドリブル,パス,シュートなど 正確な技能が必要になります。 どんな作戦にも正確な技能があってこそです。 また,正確な技能があるからいろいろな作戦を考えることができます。