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有理数のn進法表示

160518 初版 160521 更新
 はじめに,負のべきを考えておきます。
2, 4, 8, 16, … のように, 2を初項として,2倍した数を右隣りに書くということを繰り返して数列を作ります。 ある項の右隣りは2倍した数,ある項の左隣りは12 倍した数です。
この点に注目して,この数列を 2 より左に拡張します。
…, 18,14,12,1, 2, 4, 8, 16, …
このように,20=1, 21=12, 22=14, 23=18 と 0以下の整数についても指数を定義します。
 一般に 正の数 a に対して,a0=1, a1=1a,
n を自然数として,an=(1a)n=1an
 こうすると,整数m, n に対して,指数法則が成立します。
am・an = am+n, am÷an = am-n, (ab)n = an・bn
 α=177 のn 進法表示を考えたいと思います。 まず,2 < α < 3 に注目します。 この 2 はα の整数部分と呼ばれています。 「はした」の部分,α - 2 はα の小数部分と呼ばれています。 小数部分は具体的には 37 です。
一般に,任意の有理数 α に対して, 隣り合う2つの整数 n, n+1 で,n なるn があります。 この n を整数部分と呼ぶのです。 小数部分は α - n となります。
 小数部分の10進数表示を,10進小数展開あるいは小数表示と呼ぶことにします。
 \dfrac{3}{7} の10進小数展開を求めてみましょう。
0 と 1 の間を10等分すると,
\dfrac{28}{70}\lt \dfrac{30}{70}\lt\dfrac{35}{70}より, \dfrac{4}{10}\lt \dfrac{3}{7}\lt\dfrac{5}{10} であることがわかります。
\dfrac{4}{10}\dfrac{5}{10} の間を10等分すると,
\dfrac{294}{700}\lt \dfrac{300}{700}\lt\dfrac{301}{700}より, \dfrac{42}{100}\lt \dfrac{3}{7}\lt\dfrac{43}{100} であることがわかります。
\dfrac{42}{100}\dfrac{43}{100} の間を10等分すると,
\dfrac{2996}{7000}\lt \dfrac{3000}{7000}\lt\dfrac{3003}{7000}より, \dfrac{428}{1000}\lt \dfrac{3}{7}\lt\dfrac{429}{1000} であることがわかります。
このようにして, 1未満の正の数 a に対して,a = a1・10-1 + a2・10-2 + a3・10-3 + …   なる数列a1, a2, a3, … が一意に定まります。 ak を 小数第k 位の数 といいます。 それぞれの ak は 0 から 9 までの自然数です。 (\displaystyle{a=\sum_{k=1}^\infty a_k\cdot 10^{-k}} )
ak たちの求め方は,筆算では,
0.4 28
7)30
28
20
14
60
56
4
と書かれます。
\dfrac{3}{7}=0.42857142\cdots
 ak たちの求め方は,次のように表すことができます。
ka ak7・akrk
1304282
2202146
3608564
4405355
5507491
610173
7304282
8202146

 10進小数展開とは,1に満たない 「はした」の部分は, 10等分したときのどの区分に入るかをみているのです。 また,はしたが出たら,その区分をさらに10等分する それを繰り返していきます。 rk の列は,a を 7 で割った余りです。 それを 10 倍して,7で割った商と余りを求めています。 rk は 3・10k を 7で割った余りです。
数列 {rn}: 2, 6, 4, 5, 1, 3, 2, 6, …
は,初項 30, 公比 10 の等比数列を 7を法としてみた数列です。 一般に, 有理数の小数展開で現れるこの数列 {rn} は 0 が現れるか または 繰り返しをもちます。 分母を b としたとき,0 から b - 1 までの整数しか出てきませんので, 長くても b 項のうちには同じ数が出てくるからです。 したがって,数列 {an} も どこかで終わるか(どこかから先はずっと0) または 繰り返しをもちます。
繰り返しをもつ小数を,循環小数と呼び, 繰り返しの単位を 循環節 ということにします。
 循環節123 の循環小数 x = 0.123123123… は有理数でしょうか。
1000x = 123.123123123… ですから,x と 1000x は小数部分は 完全に一致します。したがって,1000x - x は整数 123 となります。 よって,x = \dfrac{123}{999} すなわち, x は有理数 \dfrac{41}{333} です。
 このように,一般に 循環小数は有理数となります。 ところが,α = 0.110100010000000100…, 小数第n位は n = 2k-1 なる自然数 k をもつとき 1, それ以外は 0, すなわち,α = \displaystyle{\sum_{k=1}^\infty10^{-2^{k-1}}} のように,循環しない小数表示をもつ数を作ることができます。 有理数(rational number) は 有限小数 または 循環小数 ですから, 有限小数でもない かつ 循環小数でもない数 は有理数ではありません。 このような数は 無理数 と呼ばれています。
 有理数全体の集合 \mathbb{Q} と無理数全体の集合 の共通部分は空集合です。 有理数の集合と無理数の集合を互いに補集合とみて, 和集合を 実数 と呼んでいます。
 \dfrac{3}{7} の5進小数展開を求めてみましょう。
0 と 1 の間を5等分すると,
\dfrac{14}{35}\lt \dfrac{15}{35}\lt\dfrac{21}{35}より, \dfrac{2}{5}\lt \dfrac{3}{7}\lt\dfrac{3}{5} であることがわかります。
\dfrac{2}{5}\dfrac{3}{5} の間を5等分すると,
\dfrac{70}{175}\lt \dfrac{75}{175}\lt\dfrac{77}{175}より, \dfrac{10}{25}\lt \dfrac{3}{7}\lt\dfrac{11}{25} であることがわかります。
\dfrac{10}{25}\dfrac{11}{25} の間を5等分すると,
\dfrac{371}{875}\lt \dfrac{375}{875}\lt\dfrac{378}{875}より, \dfrac{53}{125}\lt \dfrac{3}{7}\lt\dfrac{54}{125} であることがわかります。
このようにして, 1未満の正の数 a に対して,a = a1・5-1 + a2・5-2 + a3・5-3 + …   なる数列a1, a2, a3, … が一意に定まります。 それぞれの ak は 0 から 4 までの自然数です。 (\displaystyle{a=\sum_{k=1}^\infty a_k\cdot 5^{-k}} )
 ak たちの求め方は,次のように表すことができます。
ka ak7・akrk
1152141
25005
3253214
4202146
5304282
610173
7152141
85005

\dfrac{3}{7}=0.20324120\cdots{}_{(5)} 循環節の長さ 6 の小数展開をもちます。
 \dfrac{3}{7} の2進小数展開を求めてみましょう。
0 と 1 の間を2等分すると,
\dfrac{0}{14}\lt \dfrac{6}{14}\lt\dfrac{7}{14}より, 0\lt \dfrac{3}{7}\lt\dfrac{1}{2} であることがわかります。
0 と \dfrac{1}{2} の間を2等分すると,
\dfrac{7}{28}\lt \dfrac{12}{28}\lt\dfrac{14}{28}より, \dfrac{1}{4}\lt \dfrac{3}{7}\lt\dfrac{2}{4} であることがわかります。
\dfrac{1}{4}\dfrac{2}{4} の間を2等分すると,
\dfrac{14}{56}\lt \dfrac{24}{56}\lt\dfrac{28}{56}より, \dfrac{3}{8}\lt \dfrac{3}{7}\lt\dfrac{4}{8} であることがわかります。
このようにして, 1未満の正の数 a に対して,a = a1・2-1 + a2・2-2 + a3・2-3 + …   なる数列a1, a2, a3, … が一意に定まります。 それぞれの ak は 0 から 1 までの自然数です。 (\displaystyle{a=\sum_{k=1}^\infty a_k\cdot 2^{-k}} )
 ak たちの求め方は,次のように表すことができます。
ka ak7・akrk
16006
212175
310173
46006
512175
610173
76006
812175

\dfrac{3}{7}=0.01101101\cdots{}_{(2)} 循環節の長さ 3 の小数展開をもちます。
 分母が7 である有理数は,どんな数n を基数にしても n進小数展開は 循環するならば,節の長さは6の約数になります。 初等整数論の興味深い帰結の一つです。