式とは

160524 初版 160524 更新
 特に断りのない限り,文字は数を表すことにします。 数は乗法について,結合法則 (ab)c = a(bc), 交換法則 ab = ba が成り立ちますので, 積は順序に依りません。
 3abx2y, -2bcxy3 のように, 数と文字が掛け合わさっているものを 項 と呼ぶことにします。 A を 3abx2y, B を -2bcxy3 とすると, 2つの項の積が自然に定義されます。 AB は BA と等しくて,-6ab2cx3y4.
 2つの項の文字がどのような数をとっても,値が等しいとき, その項は 同値である と呼びます。 例えば,(3abx2y) × (-2bcxy3) と -6ab2cx3y4 は同値です。 結合法則,交換法則を用いて,文字を並べ換えたと見ることもできます。
 文字以外を係数と呼んでいます。 例えば,上のA の係数は 3 です。 同じ項でも,係数は注目している文字によって変わります。 x と y については, A の係数は 3ab であるといいます。 このとき,文字の数を次数と呼んでいます。A は 3次の項であるといいます。 x については,Aの係数は 3aby で,2次の項であるといえます。
 3abx2y + 2bxy2 のように,+ で項が連結されているものを 式 と呼んでいます。 3abx2y - 2bxy2 は 3abx2y + (-2bxy2) とみて, 3abx2y と -2bxy2 の連結とみることができます。 このように,単純な項からなる式を,多項式 あるいは 整式と呼んでいます。 例えば,3abx2y ように項1つだけも式と見て, 単項式と呼ぶことがあります。
 項の次数で一番高いものを多項式の次数といいます。 例えば,x3+3xy2 は 3次式です。 この式は x については3次式,y については2次式です。
 2つの多項式 A, B に対して,単に連結することによって加法が定義できます。  A + B と B + A は同値です。また,(A + B) + C と A + (B + C) は同値です。 連結は交換法則と結合法則が成り立ちますので,順序に依りません。
 A + A は 2A と同値です。 このように,項には自然と整数が作用しています。 さらに,mA + nA と (m+n)A は同値です。 2つの式が同値であるとき,等号で結ぶことにします。 すなわち,mA + nA = (m+n)A. また,m(A + B) = mA + mB が成り立ちます。 このことを分配法則と呼ぶことがあります。
 A + (-B) を A - B と見ることによって,減法が定義できます。
 この単純な結合法則,交換法則,分配法則によって, 式を同値な式に変形することを同値変形と呼んでいます。
 3xy + 5xy = 8xy ですが,これを同類項をまとめる と呼ぶことにします。 x について,3ax2 と -2bx2 は次数が同じなので, x については同類項みて 3ax2 - 2bx2 = (3a - 2b)x2 と同値変形することができます。 分配法則を逆に使っていることになります。
 分配法則を用いることによって,2つの多項式には積(乗法)が定義できます。 例えば,
\((a+b)(a-b)\)
\(=(a+b)a-(a+b)b\)
\(=a^2+ba-ab-b^2\)
\(=a^2-b^2\)
このように,2つ以上の多項式の積を1つの多項式に同値変形することを, 積を展開すると呼んでいます。
 逆に a2 - b2 は (a + b) (a - b) と変形することが できますが,こちら向きの同値変形を 積に因数分解する と呼んでいます。
 (a + b)2 を展開すると a2 + 2ab + b2です。 a2 - 2ab + b2 は (a - b)2 に 因数分解できます。
 \((a+b+c)^2=a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca\), \((x+1)^2=x^2+2x+1\), \(x(x+1)=6\)  のように,2つの式が等号で結ばれたものも 式と呼ばれることがあります。 違いを明らかにするときには,これを 関係式 と呼ぶことにします。 前2つは等号で結ばれた2つの式は同値です。 最後の1つは同値ではありません。 等式 A = B において,A と B が同値であるとき,つまり 文字がどのような値をとってもA と B の値が等しいとき, この等式は 恒等式 であるといいます。 そうでないとき,すなわち, ある値にしか等しくならないとき, 言い換えると,等しくなる値が制限されているとき,方程式 と呼びます。
 よく,\(3x^2+9xy+6y^2\)\(=x^2+3xy+2y^2\)\(=(x+y)(x+2y)\) と書いてしまう人がいますが, 最初の等号の前後は同値ではありません。