接線と整式の除法

161107 初版 161107 更新
曲線 y = f(x) (多項式関数) のある点における接線の方程式を y = mx + n とします。 接点のx 座標は f(x) - (mx + n) = 0 の 2重解であることを説明します。

例1

曲線 C: y = 2x2 - x 上の点 (1, 1) における接線を ℓ とします。 C と ℓ と 直線 x = 3 で囲まれた図形の面積を求めてみましょう。
ℓ の方程式を求めます。
導関数 y' = 4x - 1 なので,接線の傾きは 3
したがって,ℓ: y = 3x - 2
面積は
\(\displaystyle{\int_1^3((2x^2-x)-(3x-2))dx}\) \(=\displaystyle{\int_1^3(2x^2-4x+2)dx}\)
\(=\displaystyle{\int_1^3 2(x-1)^2dx}\)  (必然!)
\(=\displaystyle{\int_0^2 2t^2 dt}\)  (平行移動)
\(=\left[\dfrac{2}{3}t^3\right]_0^2=\dfrac{16}{3}\)

例2

曲線 C: y = x3 - x2 上の点 (-1, -2) における接線を ℓ とします。 C と ℓ で囲まれた図形の面積を求めてみましょう。
ℓ の方程式を求めます。
導関数 y' = 3x2 - 2x なので,接線の傾きは 5
したがって,ℓ: y = 5x + 3
C と ℓ との共有点のx 座標は
方程式 x3 - x2 = 5x + 3 の解である。
x3 - x2 - 5x - 3 = (x + 1)2 (x - 3) であるから,
共有点の x 座標は -1, 3
実際には,3次方程式の解と係数の関係を使ってみましょう。
接点のx座標は方程式の2重解 であることを知っていれば, 3つの解は -1, -1, β とおけます。
(-1) + (-1) + β = 1 より,β = 3
面積は
\(\displaystyle{\int_{-1}^3 -(x+1)^2(x-3)dx}\)
\(=\displaystyle{\int_0^4 -t^2(t-4) dt}\)  (平行移動)
\(=\left[-\dfrac{t^4}{4}+\dfrac{4t^3}{3}\right]_0^4=\dfrac{64}{3}\)

定理

曲線 C: y = f(x) (多項式関数) とする。 C上の点 (α, f(α)) における接線の方程式を y = mx + n とすると, 1次式 mx + n は f(x) を (x - α)2 で割った余りである。
f(x) が 2次式で x = α が放物線の軸のとき, 平方完成に他ならない。
また,これは,多項式関数のテイラー展開と見ることができる。
(参考 2次式の組立除法)
証明
\(f(x)\) を \((x-\alpha)^2\) で割ったときの商を \(g(x)\), 余りを \(a(x-\alpha)+b\) とおく。
\(f(x)=g(x)(x-\alpha)^2+a(x-\alpha)+b\) … ①
直ちに,① で \(b=f(\alpha)\)
ゆえに,\(f(x)-f(\alpha)=g(x)(x-\alpha)^2+a(x-\alpha)\) … ②
微分係数の定義により
\(\displaystyle{f^\prime(\alpha)=\lim_{h\rightarrow 0}\dfrac{f(\alpha+h)-f(\alpha)}{h}}\)
\(\displaystyle{=\lim_{h\rightarrow 0}\dfrac{g(\alpha+h)h^2+ah}{h}}\)  (②による)
\(\displaystyle{=\lim_{h\rightarrow 0}(g(\alpha+h)h+a)=a}\)
よって,余りは f'(α)(x - α) + f(α)
y = f'(α)(x - α) + f(α) は (α, f(α)) における y = f(x) の接線の方程式にほかなりません。
系 (接点のx座標は方程式の2重解)
これから直ちに
\(f(x)-(f^\prime(\alpha)(x-\alpha)+f(\alpha))=g(x)(x-\alpha)^2\)
これは,
曲線 y = f(x) の (α, f(α)) における 接線 y = mx + n で
f(x) - (mx + n) が (x - α)2 を因数にもつことを いっています。