121031 初版

教科書などにあまり書いていないが, 問題を解くときや物理などの応用へ利用価値の高い考えである。

\(\vec{p}\), \(\vec{a}\)に対して, \(\vec{p}=\overrightarrow{\rm OP}\), \(\vec{a}=\overrightarrow{\rm OA}\)となる3点O, A, Pをとる。
直線OAにPから垂線PHを引く。 \(\overrightarrow{\rm OH}\)を\(\vec{p}\)の\(\vec{a}\)への正射影という。

参考: 三角比の定義

\(\vec{h}\)を\(\vec{p}\)の\(\vec{a}\)への正射影とするとき,
\(|\vec{h}|=\dfrac{|\vec{p}\cdot\vec{a}|}{|\vec{a}|}\)

実際, \(\vec{p}\)と\(\vec{a}\)のなす角をθとすると, \(\cos\theta=\dfrac{\vec{p}\cdot\vec{a}}{|\vec{p}||\vec{a}|}\)
正射影の定義により,\(|\vec{h}|=|\vec{p}||\cos\theta|\)だから。

\(\vec{h}\)を\(\vec{p}\)の\(\vec{a}\)への正射影とするとき, \(\vec{h}=\dfrac{\vec{p}\cdot\vec{a}}{|\vec{a}|^2}\vec{a} =\dfrac{\vec{p}\cdot\vec{a}}{\vec{a}\cdot\vec{a}}\vec{a}\)

正射影の大きさが上の式で求められるから, \(\vec{a}\)と同じ向きの単位ベクトル \(\dfrac{\vec{a}}{|\vec{a}|}\)の\(|\vec{h}|\)倍でよい。
最後の式は,おもむきがある。

応用として,
直線\(l\): \(ax+by+c=0\)と点A\((x_1,y_1)\)の距離\(d\) を求めてみる。
\(l\)の法線ベクトルは\(\vec{n}=(a,b)\)である。
直線\(l\)上の任意の点をP\((x_0, y_0)\)をとって,
\(l\)とAの距離は\(\overrightarrow{\rm AP}\)の\(\vec{n}\)への正射影の大きさであるから, \(\dfrac{|\vec{n}\cdot\overrightarrow{\rm AP}|}{|\vec{n}|}\)

ここで,
\(\vec{n}\cdot\overrightarrow{\rm AP} =a(x_0-x_1)+b(y_0-y_1) =ax_0+by_0-(ax_1+by_1)\)
Pは\(l\)上の点である⇔ \(ax_0+by_0+c=0\)より  \(\vec{n}\cdot\overrightarrow{\rm AP}=-(ax_1+by_1+c)\)
よって,

直線\(l\): \(ax+by+c=0\)と点A\((x_1,y_1)\)の距離\(d\)
\(d=\dfrac{|ax_1+by_1+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}\)

点と直線の距離公式は, 正射影の考えを使うと, こんなにあざやかに導かれる。
法線ベクトルへの正射影は点の高さなのである。
この考えは立体の高さを求めるときに威力を発揮する。