130131 初版 130323 更新
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4. ディオファントス1次方程式

A 先生は,数学A での新しい題材は周期性が鍵であるから, 周期のある題材を使いたかったと話してくれた。
例えば, 11x+13y=1 の 整数解はどのように求めるのだろうか。 このくらいで互除法を用いて構成するまでもない。
合同式を用いれば 11x ≡ 1 (mod 13) となる整数 x を求めることになるのだが, 11 の倍数を 13 を法としてみれば(13 を法とする公差 11 の等差数列)
11, 9, 7, 5, 3, 1, 12, 10, 8, 6, 4, 2, 0
(11 ≡ -2 (mod 13) だから 公差 11 と公差 -2 は同じこと)
であるから, (x,y)=(6,-5) が見つかる。
ふと,1学年担当の先生の机上をみたら,ある問題集からの課題が載っていた。
問題 4-1
71x+32y=3 の 整数解を求めよ。
問題集における正解例は,互除法で1つの解を構成するか,合同式を用いた方法であった。
次のような 指導はどうだろうか。
定理 4-1
71x+32y=3 を満たす整数 x を求めることは,
71の倍数のうちで32で割った余りが3であるものを見つけることと同じである。
実際, x は整数であるから,71x は 71 の倍数のことである。
71x = 32× (-y) + 3 という式は, 71x を32で割ると,商が -y で余りが 3 である, ことを示している。
定理 4-2
71x+32y=3 の整数解を求めることは,
7x+32y=3 の整数解を求めることと同じである。
実際,7x + 32y = 3 を満たす整数の組 (x,y) = (a,b) があったならば,
7 = 71 - 32 × 2 だから,(71 - 32 × 2) a + 32b = 3.
ゆえに,(x,y) = (a,-2a+b) は 71x + 32y = 3 を満たす。
定理4-2を繰り返し使うことが,互除法による解の構成方法である。
だが,7x + 32y = 3 の場面で,定理4-1 の考え方を用いると, 7 の倍数のうちで 32 で割った余りが 3 であるものを見つければよいのだから, 7× 5 = 35 は直ちに見つかる。
では,
問題 4-2
71x + 32y = 23 の整数解を求めよ。
だったら,どうするか,
7, 14, 21, 28, 3, 10, 17, 24, 31, 6, 13, … としても (この数列どこかで見たような…),
7 の倍数のうちで,32 で割って余り 23 のものを見つけることは面倒 (7× 1 から 7× 31 の 31個のうちにはあるはず。 ということも知っておくことは,解法を覚えることよりも大切だと思う。)だ。
であるが,一度32を超えた, \(7\cdot 5=32\cdot 1+3\) を使えば,
両辺を3倍 … ☆ して, \(7\cdot 15=32\cdot 3+ 9\),
両辺に14加えて,\(7\cdot 17=32\cdot 3+ 23\),
となり,x = 17 を得る。
☆ の 3 はどのように見つけるのだろうか。
3x + 7y = 23 すなわち 3x + 7y = 2 を解くことと同じなのである。
実際,3a + 7b = 2 ⇔ 3a + 7(b+3) = 23
⇔ 7(b+3) + (7 × 5 - 32 × 1)a=23   ⇔ 7(5a+b+3) + 32× (-a)=23
⇔ (71-32× 2)(5a+b+3) + 32 × (-a) = 23   ⇔ 71(5a+b+3) + 32 × (-11a-2b-6)=23
いま,(a,b) = (3,-1) はひとつの解である。
ディオファントス1次方程式の解を求めるためには, 倍数列から見つければよい, ということを体験させて,解を構成するには, より簡単に解が見つかる方程式を見つけるのだ, 一般にはそれは互除法である,と結びつけたほうがよいと考える。
互除法の使い方の訓練よりも,互除法の思想を伝えたほうがよいのではないかと思う。
つづく