SSH と 数学
この夏の思い出,数学の課題研究,または 方程式のガロア群

数学の課題研究
 正直言って,数学の課題研究は難しい。 おそらく課題研究で一番テーマを見つけやすいのが, 生物分野,次に化学分野ではないかと思っています。 生物は観察対象が豊富であるし, 化学は少し条件を変えてみました というのができる。 もっとも,この頃は観察結果の統計処理で 数学の出番が回ってくることもあります。
 他の分野でもそうだが,数学においてなおさら, 教員からテーマを提示したほうがよいと思っています。 理想としては,生徒がテーマをもってくる, あるいは,先輩や他校がやったテーマを継承,掘り下げるのがいいですよね。
(200105追記 多少誤解を招く表現だったので補足します。 生徒にこれをやったらどう?とストレートに提示するのではなく, 生徒が取り組めそうで,今自分はこんなことに興味があるんだ のように 提示することを意味しています。 数学を本気で研究した人なら誰もが感じることですが, 今もっている知識と問題の隔たりが大きいと研究にならないことがあります。)
 参考までに,今年のマスフェスタでの 論文要旨集からテーマを拾ってみました。
 こうして研究テーマをみると, グループ分けができるように思います。 09年に恵那高校を訪ねた際に, この傾向は思いついて, その後,新潟で行われた日数教での発表テーマにしました。 高教研の研究集録にも書いたと記憶しています。
 詳しいことは,ここに書きましたが, 抜粋してみます。 もちろん,相互に関係しています。
数学史
古来から人間は数学とどうかかわってきたか。
数学の理論はどうやって作られてきたか。
探究
教科書の先にはどのようなことがあるのだろうか。
数理
数学と科学はどのようにかかわっているのだろうか。 現象をモデル化してみよう。
シミュレーション
現代では物事がかなりブラックボックス化してしまっている。 せめて,自分たちでもシミュレーションしてみよう。
 数学の課題研究がなぜあるのでしょうか。 また,これによって生徒につけさせたい力は何でしょうか。 ちょっと考えると,理科とは少し違ってくるように思います。
自分の考えを表現し,まとめる力 (文字)
自分の考えを発表する力,考えをやりとりする力 (口頭)
このあたりは,理科と共通している点でしょう。 また,数学でも実験・観察がありますから,
分析や定式化,仮説作成の能力
も身につけることができるでしょう。 ですが,数学では
考え抜く力,ごまかしのきかない論理性
が,いっそう要求されます。 そしてこれは,普段の問題集の問題演習だけでは 身につかないことだと思います。 答えのない問題に挑戦するのですから。 大学に合格するため,資格を取るためといった 試験にパスするために数学の点数を上げなければならないという 人だけでは,文化としての数学は育たないでしょう。 数学者にならなくても 答えのない,模範のない時代を生きていく彼らには 必要な能力だと思います。
 SGH と数学 で先ほど述べたことと共通していますが,
これらは,数学の課題研究から身につけられる能力だと感じています。

つづく