交代パスカル三角形

161206 初版 161206 更新
0 1 0
0 1 -1 0
0 1 -2 1 0
0 1 -3 3 -1 0
0 1 -4 6 -4 1 0
0 1 -5 10 -10 5 -1 0
1 -6 15 -20 15 -6 1
 一番上の段(第 0段とします。)に,0, 1, 0 の3つの数を書きます。
 両端以外は右上から左上の数を引いて下の段の数を作ります。  つまり,その段の数列の階差数列を下の段に書きます。
 両端には 0をつけます。
 このような規則で作られる数の配列を 交代パスカル三角形 と呼ぶことにします。
 作成規則を式で表すと, 第 n段 r番目(左の1を 0番目とする。)の数を An,r とかいたとき,
An,r = An-1,r - An-1, r-1 です。
An,r = (-1)rnCr …① が成り立ちます。
 このことを数学的帰納法により証明します。
まず,\(A_{1,0}=1\), \(A_{1,1}=-1\) ですから,
\(A_{1,0}=(-1)^0{}_1{\rm C}_0\), \(A_{1,1}=(-1)^1{}_1{\rm C}_1\) が成り立つことがいえました。
次に,
\(A_{n,r}=A_{n-1,r}-A_{n-1,r-1}\)
\(=(-1)^r{}_{n-1}{\rm C}_r-(-1)^{r-1}{}_{n-1}{\rm C}_{r-1}\)  (帰納法の仮定)
\(=(-1)^r\left({}_{n-1}{\rm C}_r+{}_{n-1}{\rm C}_{r-1}\right)\)
\(=(-1)^r{}_{n}{\rm C}_r\)  (nCr の関係式)
したがって,① が成り立つことがいえました。
 二項係数の交代和については,
\(\displaystyle{\sum_{r=0}^n(-1)^r{}_n{\rm C}_r=0}\) …②
が成り立ちます。
このページの記法では,
\(\displaystyle{\sum_{r=0}^nA_{n,r}=0}\)
 これは,階差数列から元の数列を復元する方法より直ちに出ます。
\(\displaystyle{\sum_{r=0}^nA_{n,r}=A_{n-1,n}=0}\)
 交代パスカル三角形の第 n段に現れる数列には, 次のような面白い性質があります。
 P(x) を高々 n-1次の任意の多項式とします。このとき,
\(\displaystyle{\sum_{r=0}^n A_{n,r}\cdot P(r)=0}\)
 こんな性質から,An,r をバニシング係数 (vanishing coefficient) と名付けたいと思います。